Selenium WebDriverを利用したブラウザ自動操作について、以前サンプルプログラムをあげて解説しました。Seleniumは、ブラウザで動作するWebアプリケーションのテスト目的で使用されることも多いソフトウェアです。
ただし、Seleniumはテスト実行結果の管理・評価を行うための「テストフレームワーク」と組み合わせて使用することが一般的です。テストフレームワークはプログラミング言語によって様々ですが、自分が自動テスト開発の現場で使用したことがあるものは、Rubyのテストフレームワーク「RSpec」です。
RSpecは、テスト対象の処理を特殊な構文で囲み、想定と異なる挙動が検出された場合に、テスト失敗レポートを出力します。これを利用して、Seleniumによるブラウザ処理をRSpecの構文内に記述し、Webアプリケーションの動作テストとその結果評価を行うことができます。
RSpecについて、サンプルプログラムをあげて解説していきます。
開発環境
■OS、ブラウザ
・Windows10 64bit
・Edge
■プログラミング言語、主なライブラリとバージョン
・Ruby 2.6.10p210 / Ruby 3.1.2p20
・selenium-webdriver 4.1.0
・rspec 3.11.0
プログラム実行方法
GitHubにサンプルプログラムを公開します。
https://github.com/kotetsu99/selenium_edge
使用するファイルは以下です。
・Gemfile
・edge_rspec.rb
(1)Selenium,Rspec等のインストール
GitHubにあるプログラムをダウンロードした後、コマンドプロンプトでダウンロードしたディレクトリに移動し、bundler
を利用してGemfileにあるライブラリをインストールします。
bundle install
これでGemfileにあるライブラリがインストールされます。Gemfileにはselenium-webdriverとRSpec等が記述されており、ここでともにインストールされます。
(2)Edgeドライバーのダウンロード
以下のサイトから、Edgeドライバーをダウンロード・解凍し、先ほどのフォルダの中に「msedgedriver.exe」を置いておきます。
Microsoft Edge ドライバー - Microsoft Edge Developer
※Windows 64ビットであれば「x64」が対象。
(3)edge_rspec.rbの実行
以下のコマンドを実行します。
bundle exec rspec edge_rspec.rb
サンプルプログラム解説
edge_rspec.rb を実行するとEdgeブラウザが起動し、以下の流れで自動操作が行われます。
(1)Edgeブラウザが起動
(2)Googleのトップページを開く
(3)検索欄に「test」を入力して検索
(4)検索結果を表示
(5)検索結果のトップにある文字列が「test」であるか検証
最後の(5)についてはSeleniumではなく、RSpecによるテスト結果の評価処理となります。
サンプルプログラムを掲載します。
require 'selenium-webdriver' require "rspec" # Edgeドライバーパスを指定 Selenium::WebDriver::Edge::Service.driver_path = 'msedgedriver.exe' # 起動時のページURL指定 url= "https://www.google.com/" # 検索文字列 query = "test" # 検索結果ページタイトル page_title = "test - Google 検索" # describe(テスト概要) describe "edge_test" do # テスト事前処理 before(:each) do # ブラウザ起動(describeクラス内で使うため、インスタンス変数として定義) @driver = setting_driver() # 暗黙的待機時間の設定 @driver.manage.timeouts.implicit_wait = 5 end # テスト事後処理 after(:each) do # ブラウザ終了 @driver.quit end # テスト対象処理 it "google_search" do # Googleホームページを開く @driver.get(url) # 検索欄にキーワードを入力して検索実行 el = @driver.find_element(:name, "q") el.send_keys query el.send_keys(:enter) # 明示的待機時間の設定 wait = Selenium::WebDriver::Wait.new(:timeout => 10) # 検索結果ページタイトルが表示されるまで待機 wait.until {@driver.title == page_title} # 検索結果トップに現れる文字列を取得 el = @driver.find_element(:id, "tw-source-text-ta") wait.until {el.displayed?} res = el.attribute("value").to_s # 文字列が「test」かを検証 expect(res).to eq query #expect(res).to eq "test_error" end # Edgeドライバー設定 def setting_driver() # ブラウザ動作のオプションを定義 options = Selenium::WebDriver::Edge::Options.new #options.add_argument('--headless') options.add_argument('--inprivate') options.add_argument('--lang=ja') options.add_argument('--window-size=1000,1000') # ブラウザ起動 Selenium::WebDriver.for :edge, capabilities: options end end
RSpec構文により、やや複雑そうにみえますが、構文の意味を理解していれば、それほど難しくありません。
全体的な構成としては、describe直前まで
・Webdriverのパス設定
・ブラウザ起動直後に開くページURL(googleトップページ)
・検索文字列
等の初期設定・変数定義を行います。
describe以降は、RSpecによるテストフレームワーク内の処理となり、これがテストをしたい処理となります。
(1)Edgeブラウザが起動
(2)Googleのトップページを開く
(3)検索欄に「test」を入力して検索
(4)検索結果を表示
(5)検索結果のトップにある文字列が「test」であるか検証
RSpecの構文に触れながらdescribe内の処理について解説します。登場するRSpec構文・文法は以下の5つです。
RSpecには、これら以外にも構文・文法がありますが、自分が現場で多用しているものはこれらです。構文の細かい所を省略して書くと、以下のような骨組みがRSpecの基本構成になります。
describe before ~ end after ~ end it ~ expect ~ end end
サンプルプログラムも大方、この構成にしたがっています。
describeでテスト名宣言を行い、beforeでブラウザ起動の事前準備処理を記述。afterでブラウザ終了処理の事後処理を記述。itでテスト対象となる処理を記述し、その中でexpectで実行結果の評価を行う。
expectで評価しているのは、googleの検索結果のトップに来る大文字です。seleniumコマンドで、この値をresという変数に格納し、期待値であるquery(値:test)と比較しています。
expect(res).to eq query
これが期待値通り(「test」)となっていればOKとしています。実行後に以下のようなテスト結果がレポートされ、想定通りの動きをしていることがわかります。
Finished in 5.52 seconds (files took 0.42788 seconds to load)
1 example, 0 failures
一方で、期待値を「test_error」に変えてみると
expect(res).to eq "test_error"
想定外の結果となったため、実行後にテスト失敗のレポートが表示されます。
Failures: 1) edge_test google_search Failure/Error: expect(res).to eq "test_error" expected: "test_error" got: "test" (compared using ==) # ./edge_rspec.rb:54:in `block (2 levels) in <top (required)>' Finished in 5.65 seconds (files took 0.48123 seconds to load) 1 example, 1 failure Failed examples: rspec ./edge_rspec.rb:32 # edge_test google_search
このように、Seleniumでテスト作業を自動化し、その結果をRSpecを用いて評価する。これで、Webアプリケーションが想定通り動作するかを検証するテストの自動化を実現することができます。